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浦和地方裁判所 平成6年(わ)1047号 判決

被告人(一)

商号

株式会社帝国経済社

(代表者代表取締役 関川敏男)

本店所在地

埼玉県越谷市大間野町二丁目一番地五

被告人(二)

氏名

関川敏男

年齢

昭和一七年一月五日生

本籍

埼玉県越谷市赤山町三丁目二二二番地

住居

埼玉県越谷市大間野町二丁目一番地五

職業

会社役員

検察官

中川深雪

弁護人

大谷隼夫(主任)

主文

被告人株式会社帝国経済社を罰金三〇〇〇万円に、被告人関川敏男を懲役一年六月にそれぞれ処する。

被告人関川敏男に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人株式会社帝国経済社(以下、「被告会社」という。)は、貸金業等を目的とする会社、被告人関川敏男(以下、「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役として被告会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和六三年九月一日から平成元年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九五二四万四三四九円あったのにもかかわらず、同年一〇月三一日、埼玉県越谷市赤山町五丁目七番四七号所在の所轄越谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三四二三万三三四七円でこれに対する法人税額が九三四万七一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三四九七万一七〇〇円と右申告税額との差額二五六二万四六〇〇円を免れ、

第二  平成元年九月一日から平成二年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億五三〇三万九一九三円あったのにもかかわらず、同年一〇月三一日、前記越谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五五二三万九六六九円でこれに対する法人税額が二〇一二万九四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額五九二四万九四〇〇円と右申告税額との差額三九一二万円を免れ

第三  平成二年九月一日から平成三年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億五六二七万二二三〇円あったのにもかかわらず、同年一〇月三一日、前記越谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八三七〇万七七〇四円でこれに対する法人税額が二八九二万五三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額九三六三万七二〇〇円と右申告税額との差額六四七一万一九〇〇円を免れ

たものである。

(証拠)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人に対する収税官吏(大蔵事務官)の質問てん末書四二通

一  被告人の検察官に対する供述調書七通

一  商業登記簿謄本

一  商業登記簿謄本(謄本)

一  検察事務官作成の捜査報告書(謄本)

一  越谷税務署長作成の回答書二通

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の売上調査書、貸付金及び受取利息調査書、広告宣伝費調査書、給料手当調査書、旅費交通費調査書、租税公課調査書、雑費調査書、受取利息調査書、損金不算入の利子割調査書(二通)、支払利息割引料調査書、雑損失調査書、事業税認定損調査書、その他所得調査書(二通)、現金預金調査書、貸付金調査書、建物調査書、短期借入金調査書、未払金調査書、預り金調査書、関係会社勘定調査書、代表者勘定調査書及び未納事業税調査書

一  収税官吏(大蔵事務官)作成のP/L不突合調査書

一  小林治伸の検察官に対する供述調書

一  山口晃一の検察官に対する供述調書

一  後藤勝男に対する収税官吏(大蔵事務官)の質問てん末書一〇通

一  狩谷菊枝に対する収税官吏(大蔵事務官)の質問てん末書一二通

一  狩谷菊枝の検察官に対する供述調書

判示第一の事実について

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の法人税査察更正決議書(元/8期)

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の脱税額計算書(元/8期)

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の修正損益計算書(平成元年八月期のもの)

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の修正貸借対照表(平成元年八月期のもの)

判示第二の事実について

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の法人税査察更正決議書(2/8期)

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の脱税額計算書(2/8期)

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の修正損益計算書(平成二年八期のもの)

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の修正賃借対照表(平成二年八月期のもの)

判示第三の事実について

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の法人税査察更正決議書(3/8期)

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の脱税額計算書(3/8期)

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の修正損益計算書(平成三年八月期のもの)

一  収税官吏(大蔵事務官)作成の修正貸借対照表(平成三年八月期のもの)

(法令の適用)

一  被告会社について

罰条 法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項

併合罪の処理 刑法四五条前段、四八条二項

二  被告人について

罰条 法人税法一五九条一項

刑種の選択 懲役刑

併合罪の処理 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条

(犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

刑の執行猶予 刑法二五条一項

(注)判示第一及び第二の行為に法人税法一五九条を適用するに当たっては、罰金の寡額は、刑法六条、一〇条により、軽い行為時法である平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条による。

(情状)

被告会社は、三事業年度にわたり、合計一億二九四五万六五〇〇円の法人税額を免れ、その平均ほ脱税率は、約六八・九パーセントである。被告会社及び被告人の責任は重いといわざるを得ない。

他方、被告会社は、右三事業年度分について修正申告を行い、合計一億五八四四万七九〇〇円を納付した。これは、本件ほ脱税額より約二九〇〇万円多い金額である。また、重加算税額の内金六〇〇万円も納付した。なお、未納の重加算税合計四九四五万〇五〇〇円及び延滞税合計六四六〇万八五〇〇円については、所有土地を処分するなどして、逐次納付する意向である。

以上の諸情状を主として考慮し、主文のとおり、刑を定めた。

(求刑 被告会社につき罰金三九〇〇万円、被告人につき懲役一年六月)

(裁判官 肥留間健一)

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